山本有三 たった一度しかない人生(1)

コラム

群馬県・高崎駅と栃木県・小山駅を結ぶJR両毛線に乗った。

古代、群馬県は上毛野國、栃木県は下毛野國と言われていた。その名残で、この二つの地域を両毛という。

始発の小山駅から二駅目の栃木駅で下車した。駅前ロータリーに石碑があった。「たったひとりしかない自分を、たった一度しかない一生を、ほんとうに生かさなかったら、人間、生まれてきたかいがないじゃないか。 山本有三作 路傍の石より」とある。まさにそうだ!と感動した。石碑の裏面には山本有三・略歴があり、栃木市出身であることがわかった。この力強い言葉を残した先生に興味を抱き、市内にある「山本有三ふるさと記念館」に行ってみた。

駅からまっすぐ伸びる「蔵の街大通り」を歩いて、約二十分で同記念館に着く。栃木市は、数多くの蔵が残る風情のある街だ。関東の倉敷と言われているが、納得する。江戸時代には、利根川水系の巴波川(うずまがわ)を利用した舟による物資の集積地となり、商都として栄えた。明治の廃藩置県後、最初に栃木県に県庁所在地があり、かつての繁栄が伺える。戦火を逃れた古い見世蔵(店蔵)造りの商店が並び、その一つが同記念館になっている。山本有三生誕地の隣地にあった商家を改修した施設で、趣がある。先生の遺品や作品などの資料が展示されていた。
(つづく)

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