二万点の書道コレクション ~台東区立書道博物館~

コラム

文化庁の調査によると、日本に博物館の数は五千以上あり、そのうち美術館は千以上ある。しかし、書道に特化した博物館、美術館は数が少なく、全国で数えるほどしかない。その一つの「台東区立書道博物館」を訪ねた。

企画展 書でみる日本の歴史と文化
台東区立書道博物舘 入口

この博物館は、もともと洋画家で書家でもあった中村不折(一八六六―一九四三)が、独力で蒐集したコレクションを展示するために、昭和十一年(一九三六)に開設したものだ。

不折死後、中村家によって維持、保存されていたが、平成七年に台東区に寄贈された。中国及び日本の書道史研究上重要なものを有し、重要文化財十二点、重要美術品五点がある。

訪れた日には、「中村不折コレクション 書でみる日本の歴史と文化」という企画展が行われていた。古代の貨幣や石碑の書から、日本史に名を残した人物の書など、文字の伝来から昭和初期までの作品が一堂に展示されていた。

私は、筆跡研究の第一人者である森岡恒舟先生(日本筆跡診断士協会会長)から筆跡について学んだ。その中で、良寛、足利尊氏や織田信長など数々の歴史上の人物の筆跡を例に学んだ。

これと全く同じ資料が展示されていたのに驚いた。おそらく、森岡恒舟先生が中村不折コレクションを引用した資料だったのであろう。筆跡勉強資料の実物を拝見することができ嬉しかった。当然ながら、実物は書の雰囲気をより一層感じさせ、感動した。

この企画展が展示されている「中村不折記念館」の他にも「本館」がある。「本館」には、殷時代の甲骨文字から、青銅器、玉器、仏像などに彫られた古代中国の資料や日本の金石文が数多く展示されている。漢字の成り立ちや古代中国文化を知る上で、重要な資料である。

この膨大な資料を、すべて私財を投じて蒐集し、博物館を開設した「中村不折」という人物に興味を惹かれた。

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