岡山県和気郡和気町はのどかだ。
県東南部に位置し、岡山市街から車で五十分、人口約1万3千人の小さな町だ。
JR和気駅を降りると町のシンボル「和気富士」が見える。吉井川が流れ、小高い山々に囲まれた町は、和やかな氣が漂う。
歴史は古く縄文時代以降の遺跡や古墳がある。古代は山陽道が通り栄えていた。
また歴史上、重要な役割を果たした和氣清麻呂公の出身地でもある。
公を祀る「和氣神社」がある。鳥居の前には高さ4.6m、朝倉文夫が製作した大きな銅像がある。
凛々しく厳しい目で前方を見据えている。「道鏡事件」(宇佐八幡神託事件)で決意を内面に秘めた同公が表現されている。
この事件は、神護景雲3年(769)に起こった。当時、僧侶の道鏡が孝謙天皇に寵愛され法王となり、権力を持っていた。
そんななか、宇佐八幡の神託として「道鏡をして皇位に即かしめば天下太平ならん」と大宰主神が朝廷に上奏した。その真偽を確かめる為、宇佐八幡に派遣されたのが同公である。
そして、身を清め神殿に額づくと「道鏡を掃ひ除くべし」という真の神託が降りた。
帰京して神託を告げたところ、道鏡の怒りを買い大隅國に流刑された。1年後、道鏡が追放され許されて京に戻る。その後、桓武天皇のもと平安遷都などで活躍した。
同公の銅像は皇居前にもある。流刑の身になっても皇室の危機を救った英雄だからだ。
同神社では、同公のほか和氣氏の祖である垂仁天皇の皇子・鐸石別命、その曾孫でこの地に土着した弟彦王らと同公妹で朝廷に仕えた和氣広虫姫命も祀っている。
また、道鏡一味に追われながら宇佐八幡まで向かった同公を、「三百頭の猪が守護した」という故事から狛犬ならぬ狛猪がいる。
岡山ののどかな町で、皇室の危機を救った和氣清麻呂公像に接し、その偉業に感動した!
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