昔ながらのかつお節(1) ~焼津・ヤマ十増田商店~

感謝・感動・歓喜!

いろは君はかつお節が好きだ。

豆腐やほうれん草のおひたしなどを食べる時、その都度、かつお節を削って食べている。削り立ては、風味が豊かだからだ。

二年ほど前、かつお節の産地・焼津で、昔ながらの手火山造りの製法を守り続けている「ヤマ十増田商店」の工場見学をした。焼津は古くからの水産業者が多く、社名を屋号で呼ぶ慣習がある。同社は「やまじゅう」の屋号で呼ばれ、親しまれている。手間暇かけて製造している様子をみて感動した。

かつお節作りには、香りと味を造り出すための焙乾という工程がある。燻製させながら乾燥していくことで、世界一硬い食材と言われるかつお節ができる。

その工程は、江戸時代の昔から、「手火山式」の焙乾法が一番だと言われている。しかし、非常に手間のかかる方法のため、大量生産には向かず、現在では日本で数社しか行っていない。

「やまじゅう」さんは、この「手火山式造り」の製法を守り続け、職人の手により、ひとつひとつ丹念に製造している。

包丁とまな板
地道な骨抜き作業
篭に並べられた半身

工場見学は、まず冷凍倉庫を拝見する。かご一杯にかつおが入っており、最初に血抜きをする。そして、機械で頭を落とし、お腹の部分を三角に切り取り、内臓を取り除く「腹身取り」をする。それから、独特の包丁で三枚におろし、半身にする。取り除かれた内臓は、塩辛に使われる。心臓は、「かつおのへそ」と呼ばれ、焼津では酒のつまみで有名だ。半身におろされたかつおは、反ったり、変形したりしないように篭の中にきれいに並べて、釜茹でをする。かつおの煮汁は、別の業者が取りに来て、濃縮し「かつおエキス」として活用される。釜茹でされたかつおの半身は、骨抜きをする。半身が崩れないように、細かい骨まできっちりと抜く丹念な作業である。

手火山式の焙乾設備と薪
手火山式焙乾
急造庫の薪

そして、骨をぬいたかつおの半身を焙乾する。「やまじゅう」さんの焙乾工程は二つに分かれている。最初に「手火山式焙乾」で、薪を炊いて、篭に並べた半身を燻す。篭を入れ替えながら、すべての半身に燻製の香りがつくようにしていく。

現在、多くのかつお節工場では、乾燥機で煙を送りこんで、急速に焙乾をしている。効率的であるが、「手火山式」よりも燻製の香りづけに劣る。続いて、真っ黒になったかつおの半身を、急造庫という焙乾設備で、さらに時間をかけて焙乾していく。急造庫は四階立てで、一階で薪を炊き、火を入れては休ませて、を繰り返して水分を抜いていく。二階、三階、四階と篭を入れ替えながら、すべての半身を均等に乾燥させていく。この工程もすべて手作業で、なんと約四十日かけて焙乾させ、真っ黒なかつお節ができる。

焙乾後の炭付きのかつお節
じっくりと燻製された炭付きのかつお節
炭を落としてかび付けした本枯節

真っ黒なかつお節の炭をペーパーをかけて落とすと、荒本節と呼ばれるかつお節になる。じっくりと長い時間をかけて焙乾して、原料の重さの約五分の一にまで、濃縮されるのだ。

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