大田区にある「山王草堂記念館」を訪ねてから、徳富蘇峰のことが気になって仕方がなかった。
そして、二宮にある「徳富蘇峰記念館」を訪ねた。JR二宮駅から徒歩十二分ほどの住宅街にある。


同記念館は、秘書を務めた塩崎彦市氏が、蘇峰から託された膨大な史料や蔵書、書簡等を展示した施設である。常設展では、蘇峰揮毫の書画、写真、愛用品など実物資料が豊富に展示されている。
迫力があり、95年のダイナミックな生涯が伝わってくる。


企画展は、「教科書で見た!!あの人が書いた手紙」展だった。同館には、蘇峰に宛てられた差出人一万二千人、四万六千通もの手紙がある。そのなかで、勝海舟、乃木希典、夏目漱石など教科書に出てくる偉人十人の手紙が展示されている。


私は、筆跡診断士をしており、筆跡に興味を持っている。特に、戦前の明治・大正・昭和初期の筆跡に関心がある。なぜなら、現代人の筆跡は小さくまとまっているが、戦前の人は達筆で大胆なものが多いからだ。現代からすると破天荒に感じるものも多い。そこに生き様が顕われているように思っている。
十人十色の手紙の筆跡が面白かった。
同館では、「書に親しむシリーズ」として、著名人百人の蘇峰宛の手紙及びその解説を販売している。そのジャンルは、政治家、実業家、文学者などの十ジャンルあり、それぞれ十人分ある。「明治・大正・昭和の手紙アーカイブ館」と謳っているが、まさにその通りである。
筆跡研究をするにあたり、資料集めが一苦労である。しかし、この館に来れば一通りが揃うので、ありがたい。これだけ膨大な史料を維持、保管し、解説している熱意が凄い。また、同館は、インターネットで、蘇峰に関するこれらの手紙(書簡)や、図書、資料を検索できるようになっている。さっそく、「書に親しむシリーズ」三十人分を購入した。一通り読み込んで、また改めて訪ねてみたい。
館内展示をみて、蘇峰は稀代のジャーナリストであったが逆境も多かったことがわかる。「国民新聞社」は2度の焼き討ちに遭った。83歳の時、GHQからA級戦犯容疑者にも指名され、公職追放も受けた。まさに激動の生涯だった。
辞世の句は、「吼え狂う八重の汐路を凌ぎ来て心静けく港に入る」とあった。
信念を持って、幾多の困難にもめげずに、力強く生き切った人生に、感動した。
コメント