川内ガラッパ(その2) ―出版界に革命をもたらした山本實彦―

もう一人、「川内ガラッパ」(センデガラッパ)といえる偉人がいる。

明治18年(1885)に川内で生まれた山本實彦だ。貧しい家庭に育ち苦学して上京、法政大学の夜間部を卒業し新聞記者になった。大正8年(1919)、28歳で「改造社」を創立し、総合雑誌「改造」を創刊した。大正12年(1923)に、一冊一円の現代日本文学全集(円本)を発刊した。

円本によって、それまで高価だった本が安く手に入るようになり、読者層が急拡大し、出版界に革命を起こした。それにより、作家の収入が安定し、社会的地位も向上した。

多くの作家の信頼を得て、芥川龍之介、谷崎潤一郎、菊池寛など文壇大家が寄稿した。そして、「中央公論」と並ぶ権威を誇った。また、無名作家だった賀川豊彦や林芙美子などの作家も見出した。

その他に、作家の講演会を度々開き、作家と読者との交流を生んだ。奇抜なアイデアと人望で、多くの作家に慕われ、〝作家たちの親父〟と言われた。

同氏の業績は、出版だけにとどまらない。私費でアインシュタインやラッセルなどの世界的文化人を日本に招いた。また、衆議院議員にもなり、地元の切望であった川内川の改修などに精魂を注ぎ、大雨による氾濫を減少させた。

同氏の信条は〝百難克服〟である。幾多の困難にも立ち向かい、克服して人生を切り開いた。まさに常人には真似できない「川内ガラッパ」である。  

薩摩川内市には、「川内まごころ文学館」があり、同氏の常設コーナーがあり生涯と業績がよくわかる。「改造」に寄稿された多くの作家の原稿をみることができる。作家により字体、書き方が違い興味深い。気韻生動が伝わってくる。千点を超える原稿が保管されており、これだけ多くの作家の原稿を拝見できるところは滅多にない。〝百難克服〟の生涯、そして後世にまで重要な資料を提供していることに感動した!

コメント

タイトルとURLをコピーしました