いろは君が最も好きな城は、浜松城である。
徳川家康公が、二十九歳から四十五歳までの青壮年期の十七年を過ごした城だ。後に天下を取ったことから、「出世城」と言われている。浜松市の中心部にあり、自然が豊かな浜松城公園を、子供の頃から幾度も訪ねている。明治維新後に廃城となったが、昭和三十三年、市民の熱意、協賛によって再建された。



行く度に感動するのが、石垣である。自然石を巧に組み合わせて積み上げた野面積みで、一見崩れそうに見える。しかし、小石や砂利が詰めてあり、水はけがよく堅固になっている。この石垣だけは、築城された戦国時代のままの姿である。きれいに整った石垣はよく見るが、これほど荒々しく、ワイルドな石垣はあまり見たことがない。遠州のやらまいか気質が感じられ、好きだ。また、富士山を望むことができる天守閣からの眺めも良い。
令和三年、久々に訪ねたところ、城内部の資料館はガラリと変わっていた。以前は、手書きの説明文を交えた昭和の資料館であった。情熱がこもった展示で、三方原の合戦が、その場にいるような臨場感で伝わり、好きだった。合戦の絵を想像し、胸躍り、のめり込んで鑑賞した。
ところが、令和の展示は、現代風のスクリーンをタッチして、映像がスライドする殺風景のものになっていた。一般的には進化しているのだが、アナログ好きのいろは君は、昔の方が好きだった。
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